85年「Kamakura」以来となるキャリア2作目の2枚組オリジナル。しかし2枚組というボリュームでの実験作だった「Kamakura」に対して今回は非常に平穏。“みんなのサザン”がたっぷり30曲。どこを切って聴いても満足度の高い楽曲集である。
思えば90年代は桑田のエゴと“みんなのサザン”像がせめぎ合い、ときにデジロックに傾倒した「01Messenger」「イエローマン」のようなケッタイな(でも大好き)作品なども生まれていたのだが、ここに収められた03年「涙の海で抱かれたい」以降の一連のシングル、そして本作を聴くに、彼はここにきて“みんなのサザン”を一生引き受けます、と腹を括ったのだろうか。
90年代の作品にまま見受けられた、桑田が一人暴走してバンドがないがしろにされている感もなく、(実際の制作の過程や内情はともかく)非常に平和で微笑ましい一個のバンドとしての空気に満ちている。そういう意味ではこれからも日本にサザンあり、そんな風に祝福されるべきアルバムなのかもしれない。でもおれ桑田が一人でヘンなことやってる90年代の作品のが好きなんだよなあ。それはもう完全にソロに振り分けるんでしょうか。
※2006.6.3の文章を再録